2025/04/21
不動産業界における質問型営業の重要性
社長が語る、変化する顧客ニーズへの対応
はじめに:なぜ今「質問型営業」が求められるのか?
はじめまして。広島で不動産会社を経営しております、岩田と申します。
現在54歳、業界歴は31年。これまで数え切れないほどのお客様と接してきましたが、今、特に強く感じているのが「聞く力」の重要性です。
近年、お客様のニーズはますます多様化し、かつ見えにくくなっています。
表面的な要望の裏にある“本音”にどれだけ気づけるか――この差が、営業の質を大きく分けていると感じます。
そんな中、私が今、社内でも強く意識しているのが「質問型営業」です。
単に物件を紹介するのではなく、お客様の言葉に耳を傾け、背景にある課題や価値観を引き出していく。
不動産という人生の大きな選択肢に関わる私たちにとって、この姿勢こそが、これからの営業のスタンダードになっていくと確信しています。
…と、少し堅い話をしましたが、実は私自身、もともと不動産業界を目指していたわけではありません。
本当はパイロットになりたかったんです。筆記試験は通ったのですが、最終の身体検査で“鼻の通り”が原因で不合格。夢が空中で着陸するとは、こういうことかもしれません。
その後、就職活動で不動産会社に拾っていただき、気づけばこの道一筋。営業の世界に入り、最初に学んだのは“切り返しトーク”の技術でした。
売り込む営業から、聞き出す営業へ:営業スタイルの転換点
新人時代の営業スタイルは、いわば“反射神経勝負”。
「駅から遠いですね」と言われれば「その分静かで落ち着いた環境です」と返す。何か言われたら即レス、型どおりの対応。デメリットじゃなくてメリットですよとか、ないしはデメリットを相対化させるような営業トーク。それが営業だと信じて疑いませんでした。
でもあるとき、「この物件はこの方に合わない」と思ったお客様に、正直にそうお伝えしたことがあります。結果、そのお客様は数週間後に「やっぱり岩田さんから買いたい」と戻ってきてくださいました。
この経験が、私の営業観を変えました。
売り込むのではなく、伴走する。商品をすすめるのではなく、お客様の未来に寄り添う。その方の暮らしにとって、何が本当に最適かを一緒に考える――その姿勢こそが、信頼を生むのだと強く実感しました。
今では、自社の商品を売ることが営業のゴールではないとさえ思っています。お客様が何を求めていて、どんな暮らしを思い描いているのか。その輪郭をともに探ることが、最も大切な仕事だと感じています。
「何が欲しいですか?」ではなく「どんな暮らしがしたいですか?」
営業現場では、つい「ご希望の条件は?」と聞いてしまいがちです。
駅まで徒歩何分、間取りは何LDK、日当たり、収納の広さ……。もちろん、それらは大切な要素です。けれども、それはあくまで“表層のニーズ”に過ぎません。
本当に知るべきなのは、その条件の背景にある「暮らしのイメージ」です。
たとえば「駅近がいい」と言われたとします。
それは通勤が楽だからかもしれませんし、仕事帰りにふらっと飲みに行きたいのかもしれない。あるいは、お子さんがまだ小さくて、送り迎えの負担を減らしたいのかもしれない。つまり、同じ“駅近”でも、理由は人それぞれなんです。
だからこそ、私たちは「何が欲しいか」ではなく、「どんな暮らしがしたいか」を丁寧に聞く必要があります。
これはただのヒアリング技術ではなく、共感と想像力の勝負です。
お客様が言葉にしていない気持ちを汲み取る。雑談の中から価値観を見つける。そうやって少しずつ、お客様自身も気づいていなかった“本当の希望”が、言葉になっていく。
私はこのプロセスを、「営業というよりも一緒に人生の地図を描くようなもの」だと感じています。
顧客の「本音」を引き出す3つの質問テクニック
「本音を引き出す」と聞くと、何か特別なスキルが必要に思えるかもしれません。
ですが、実際はシンプルな問いかけを、丁寧に繰り返すことがカギになります。
私が現場で大切にしているのは、次の3つのアプローチです。
①「それはなぜですか?」と一歩深掘る
たとえば「明るい家がいいんです」と言われたとき、そのまま「南向きですね」と返すのではなく、
「どういうときに“明るさ”を大事にされてますか?」と聞いてみる。
すると、「子どもが朝なかなか起きなくて…」とか、「在宅勤務が多いので、気分が沈まないようにしたくて」といった背景が出てくる。
これが提案の“芯”になります。
②「今のご住居で不便に感じていることは?」と過去をヒントにする
現在の不満や課題には、希望の“種”が隠れていることが多いです。
「玄関が狭くて、いつも靴が散らかるんですよね」なんて話から、「じゃあ、土間収納付きのプランをご案内しましょう」と自然な流れで提案が生まれます。
③「10年後、どんな暮らしをしていたいですか?」と未来を描いてもらう
今の希望だけでなく、将来像を描いてもらうことで、お客様自身も気づいていなかったニーズが浮かび上がります。お子さんの成長や、仕事の変化、趣味の話――それらを織り込んだご提案は、確実に“刺さる”んです。
こういった質問は、テンプレートとして覚えるよりも、“自分の言葉”として馴染ませることが大切です。
ロボットのように話すのではなく、会話のキャッチボールの中で自然と投げかける。 その空気感こそが信頼につながると感じています。
実際の成功事例:質問型営業が成約率を上げる理由
あるお客様とのやりとりが、私にとって“営業観の転換点”になりました。
その方は、ある物件をご検討中でしたが、どうも心のどこかで踏み切れていないように見えたんです。話をじっくりと伺っていくうちに、「本当に欲しい暮らし」と「その物件の条件」が微妙にズレていることに気づきました。
そこで私は思い切ってこうお伝えしました。
「おそらく、こちらよりもお隣の東急さんの物件のほうが、お客様の暮らしには合っているかもしれません。」
…今ならわかりますが、これ、普通なら営業として“禁句”かもしれません(笑)。でも、そのときは売ることよりも、お客様にとってベストな選択肢を一緒に考えることが、何より大切だと感じたんです。
数週間後、そのお客様から一本の電話がかかってきました。「いろいろ見たけど、やっぱり岩田さんから買いたいと思いました。予算、少し上げることにしました。」
営業として、これほど嬉しい言葉はありませんでした。
このエピソードは、私にとって“営業マン”から“パートナー”へと立ち位置を変えるきっかけになった出来事でした。
カウンター越しに向き合う関係ではなく、お客様の隣に立って、一緒に未来を考える関係へ。この信頼関係があるからこそ、私たちの提案は“売り込み”ではなく、“アドバイス”として届くのだと思います。
これからの不動産営業に必要なマインドセット
“聞き出す営業”を実践するには、テクニック以上に大切なことがあります。
それは、「お客様の人生に、少しだけ真剣に関わる」という姿勢です。
物件の情報を並べるだけなら、AIにもできる時代です。でも、お客様の心の奥にある本音や不安を汲み取り、それをもとに“最適な選択”を導き出すには、人としての思考力や共感力が欠かせません。
つまりこれからの営業は、「聞く力」+「寄り添う力」=信頼される人間力が鍵になるのだと、私は思っています。
このあたりの話は、少し長くなるので、また改めて。
次回の記事では、「質問型営業を実践する上でのマインドセット」について、もう少し深く掘り下げていきたいと思います。
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- 2,780万円
- 間取り
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- 修繕積立金
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